小説家になろうのＳＳ

＞世界に蔓延る勇者達
＞http://ncode.syosetu.com/n1330l/

ジャンル：ファンタジー、異世界トリップ
主人公：男、時々女

世界に蔓延る。
そのタイトルからして何か勇者がまるでフィールドでわらわら湧いてくるモンスターのような扱いである。

そして実際、湧き出るように多いらしい。
作中ではまだ全員登場には程遠いが、主人公は最も新しく召喚された勇者であり、主人公が呼ばれるまでに召喚された勇者の数はなんと100人。
しかもそれは今回の召喚人数をカウントしたものであり、過去に召喚された数を合わせると更に増える。

ストーリーに関して言えば、それなりに斬新かもしれない。
大まかに言うと商人の主人公がチートなヒロインと一緒に旅をする話だ。
こう説明すると「狼と香辛料」を連想してしまう人も居るかもしれないが、わざわざ説明するまでもなく全く内容は違う。

ヒロインは今回の召喚で最初に呼び出された五人の勇者のうち、一番強かった事で1番目の勇者として「傾国の魔女」の称号を受けた少女。
そして主人公は前述の通り100番目に召喚された、商人の少年である。

勇者が召喚されて、その目的が魔王討伐となれば、当然魔王との「決戦」が期待されるのだが、このＳＳでそんなものは冒頭にちょびっとあるくらいである。
以降の戦闘は魔物相手を除けば、「決闘」ばっかりである。
え？　勇者と魔王の話でお約束な名前付きの中ボス？　顔すら会わせないままセリフも無く一瞬で蒸発しましたが何か？　もう一人は何か勇者の下僕になって魔王と戦ったりしてますが何か？
そもそも魔王より人間と戦ってる方がよほど多い気がする。
ていうかぶっちゃけると、当代魔王よりもヒロイン勇者の方が王城を破壊したりしてよほど魔王のような行動をしているような気が（ｒｙ

私にとって意外だったのが、最強魔術師美少女というチート性能のヒロインであるのに、吐き気のするような満腹感を感じなかった事だ。
私は「ほらほら、このヒロインは素晴らしいでしょう！？　こんなに主人公にアタックしてくるなんて愛しく思えるでしょう！？　アナタも好きになるでしょう！？　むしろ好きになったでしょう！？」と押し付けられてくるヒロインが大嫌いなのだけれど、このＳＳのヒロインにはそんな嫌悪感を、少なくとも私は感じなかった。
冒頭がヒロインの悲劇的な展開から始まり、ヒロインの心理描写などで、ヒロインの「人並みに幸せになりたい」という願望、主人公への依存経緯等もしっかり描かれている。
そしてヒロイン自身が主人公に正面きって「私はアナタのものになったんだからあなたは私のものよね」的な事をキッパリハッキリ言うので、逆に気持ちが良い。
その為か、作中のヤンデレまがいの主人公へのベッタリ依存が、それほど気にならない。
それに加え、他者からの「ヒロインと一緒になれるなんてお前は幸せ者だな」的な「好きになる前から勝手にカップル認定」的展開が無いのも爽快だ。
これがあると吐き気が倍どころか乗算レベルで増えるので、マジで無くて良かった。

というか、このＳＳで一番鬱陶しいヒロイン候補は王女でＦＡだと個人的に思う。
出番はそれほど多くない筈なのに、妙にウザイ。
ロクに接触もなくこちらの意思もマトモに聞かないうちから勝手にニコポか何かされたらしく、妙に接近してきて鬱陶しいことこの上ない。
まったくもって、三番目の脳筋バカながらも見ていて気分の良い勇者は彼女をさっさと落として遠くで幸せにして欲しい。
くれぐれも、こちらに近寄らせないで貰いたい。


とりあえず、タイトルで戦闘とか期待すると大きく空振りするかもしれない。
ギャグを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。
でも続きを読みたくなる。
そんなＳＳ。